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「こんなものでごめんね?」
「上等よ、いただきまーす!」
朝ご飯。
突然のお客様になんとかお出ししたのはトマトリゾットもどきとスパニッシュオムレツ、チーズを載せたクラッカー、ヨーグルト。
いや、パンもなかったし炊飯器も空だったから、ラップにくるんで冷凍してあった白ご飯とあり合わせのもので作ったのだけれど。トマトの缶詰めも無かったからトマトベースの野菜ジュースを使ったし。
「んん~、美味しいわよ、このリゾット」
「この野菜ジュース、コンソメの素加えて味整えるだけでスープになるのよ」
ジュースの紙パックを見せるとふんふん頷く。長めの前髪を私の髪ゴムでピョンと上向きに括ったマキちゃん。昨夜と違って薄化粧だけれど、こうして見るとやっぱり美人。
着ているのは私が一瞬だけ部屋着にしていたオーバーサイズのロングTシャツだ。大柄なマキちゃんが着ると微妙な丈だったので、兄の部屋からジョガーパンツを拝借して着てもらっている。
「ねえ、マヨネーズない?」
「マキちゃん、マヨラー?」
「ケチャップと混ぜたのが好きなのよ」
「じゃあ私も」
冷蔵庫から持ってきたマヨネーズを、オムレツに掛けたケチャップの上にグニグニ絞り出す。
「んふ、美味し!」
唇にケチャップとマヨネーズを付けてニンマリ笑うマキちゃん。―――すっかり思い出した。ハルちゃんの店で意気投合したお店のスタッフさんだ。
――『じゃあウチに来なよ~。部屋空いてるよぉ!』
耳に蘇る、私自身の声。
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