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「良いの? アタシが使わせてもらって」
ふたりで朝食の片付けを終え、私はマキちゃんを兄貴の部屋へと案内した。
「うん。年内は戻らないって言ってたから。兄貴もあんまり使ってなかったのよ、この部屋。昔のものを置いてる物置みたいなもんで・・・・ちょっと断り入れとくわ」
私はその場でスマホから兄に
『しばらく知り合いを泊めたいんだけど、1階の兄貴の部屋、使ってもらって良い? ハルちゃんのお店のスタッフさんなの』
とメールを入れた。
時差を考えると寝てる時間だろうから事後承諾のつもりだったが、すぐに了解のメールがきた。
『好きに使って良いよ。邪魔な物は2階の部屋に入れといて』
『ありがと』と返事を打ち、承諾を得た旨マキちゃんに伝えると
「ねえっ、お兄さんってイケメン?」
と瞳を輝かせるから苦笑した。お店で会った覚えはないらしい。
「そこそこ。・・・・これよ」
私がスマホの写真を呼び出して見せると、嬉しそうに覗き込んだマキちゃんの顔が曇った。
「・・・・奥さん外国の人なんだ? 美人ね」
奥さんと子供達も一緒に映った家族写真。そう言えば言ってなかったが兄貴は38歳、妻子持ちだ。
「兄貴が若い頃、買い付けに行った先で一目惚れして、今もメロメロ。だからほとんどあっちに居るわよ、社長のくせに。
まあ商品の買い付けやら、此方から送った物をあっちで売りさばくのは社長がやってくれてるけど」
独りで帰国したときはここで寝たりもするが、2階に夫婦の寝室と子供達用の部屋がある。この部屋と現在私が使っている部屋は本来ゲストルームだった。
社長修行の間はこっちに家族で居たのだけれど、子供の教育は彼方で受けさせたいとスウェーデンに家を構えた。
それでも智紀と別れた直後は兄貴もしばらくこっちに居てくれた。智紀の両親とも話をしなければいけなかったから、一人では心細いだろうと。
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