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父も店内の準備に追われていたが、生き生きしていた。
『充実しているよ。こうでありたかったんだよ。また舞と一緒に暮らせるし、お父さんはいま楽しい!』
生まれた家を手放してしてしまったが、確かに父は幸せそうだった。
一年後の春。深い雪の季節を越え、ペンションの改装も終わり、舞と父はやっと第二の実家となるそこへ引っ越した。
カフェの開店準備も完了し、開店は舞が秋に準備した花が咲き始める四月半ばと決まった。
『スミレがびっしりと囲うカフェです』
店主となった父が最初にSNSに投稿した写真は、新しくなったカフェの周囲を、紫のリボンが囲むスミレの写真だった。
『サフォークの丘の麓、スミレ・ガーデンカフェ 開店です。季節に合わせ庭に花が咲きます。徐々に準備中です。さまざまな庭のお花をお楽しみいただけます。お待ちしております』
カフェの名は『スミレ・ガーデン』。開店です。
しかし、案の定。舞が心配していたとおりに、父のカフェには人が来なかった。
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