③ カムイはいつも、そばにいる

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 イナウはアイヌ(人)が作り出すカムイにとってのお土産でもあり、アイヌと交信する依り代でもあった。もしかするとカラク様にとってはそれが『花』、『お茶』、『焼き菓子』だったのかもしれない。本当はカムイかどうかもわからない。アイヌの幽霊だったかもしれない。でもアイヌのなにかを乗せて、その人はここにいた。それでも、舞と優大は彼のことをカムイ、『神』だと信じている。 「もしかすると。俺の娘も、カムイと通じる花守人になるかもな」 「パン職人かもしれないよ。また焼き菓子大好きなカムイかも」  なにになるかは、育ってからのお楽しみ。それでも娘にも花と庭とお菓子とカラスの守り神、そしてアイヌとカムイの話はしていきたいと舞も優大もそう決めていた。  その日の夕。ラベンダーの香りがする路を通って、舞は納屋を施錠しようと向かう。アルバイトの時間が終了した美羽はまた、ガーデンに出て夕の花を描いている。やっぱりそこにカラスが一羽、彼女の足下でちょんちょんと落ちている花びらをつついていた。  優しい夕闇の中、その納屋に辿り着くと、いつかのように水道蛇口の上にカラスがとまっていた。
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