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お爺ちゃんも身を乗り出した。
父と優大のほうが、なぜかカチンと固まるような緊張をみせている。
白いタクシーのドアが開き、そこからセミロングの黒髪を一つに束ねている女の子が降りてきた。きちんと自分で料金を支払い、開いたトランクから運転手と一緒にスーツケースとボストンバッグを取り出している。
舞はもう待ちきれない。立ち上がって、その子が見えた店のドアへと急いだ。
木枠の硝子ドアの向こうで、その子と目が合う。彼女もとびきりの笑顔を見せてくれ、荷物は地面に置いたまま、店のドアへと駆け寄ってくる。
舞からドアを開けて、彼女を呼ぶ。
「美羽!」
「お姉ちゃん!」
彼女から、舞へと抱きついてきた。あの時、舞があげた小鳥と葉っぱ柄のリバティプリントのブラウスを着ている彼女を、舞もぎゅっと抱き返す。でも今年はちょっと力が入りづらい。舞と美羽が密着できない隔たりがあったが、美羽がそれを確かめて、さらに嬉しそうに笑った。
「わあ。ほんとうだ。お姉ちゃん、お腹おっきくなったね」
「うん。六ヶ月なんだ。どうやら女の子ぽい。産まれるまでわからないけれど」
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