② カラスに恩返し

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 それを聞いた父が『美羽~』と涙ぐんだので、父もだいぶ歳を取ったかなと、舞は苦笑いが浮かんでしまう。でも舞も嬉しいし、とても助かる。大きくなってきたお腹を撫でながら、そう思う。 「美羽ちゃん、しっかりしてきたね。なんかこう大人っぽくなったし、舞ちゃんにますます似てきたかなー」  加藤のお爺ちゃんも冷やかし半分でやってきたのに、優大と美羽の義兄妹なのに、正式な雇用をするための面接を真剣に見守っている。 「自分のための動機はないのかな」  優大のさらなる追求だったが、美羽は義兄を見据えて、真顔で答えた。 「この庭とお店を守るためです。カラスの神様にも恩返しをしたいと思っています」  きっぱりと答えたそのあと、しばしの沈黙がつづく。その間、優大のあの睨みが美羽を突き刺し、美羽は美羽でまったく動じずにそんな男の視線を受け返す眼差しを見せていた。 「遊びじゃないぞ。他に雇った大学生に高校生もいる。オーナーの娘、店長夫妻の妹という甘えは通用しないぞ。特に俺がそこを気にして厳しくするかもしれない」 「もちろんです。オーナーの娘で、店長夫妻の妹だからこそ、人より努力しますし務めます」
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