② カラスに恩返し

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 美羽の夏休みには、家庭教師兼の大学生アルバイトを去年から雇っている。今年も同じ女子大学生が、店の手伝いと家庭教師として来てくれることになった。あともう一人、庭仕事のために同じ町内の高校生の男の子が通いで来てくれることになった。去年の夏は、ここに遊びに来ている女の子として過ごしていたが、今年はどうしたことか求人を募る時期に、いきなり東京から美羽の履歴書が郵送されてきて、家族全員で度肝を抜かれた。父の意向で『本気で面接をして考えてあげて』と言われたこと、松坂のご両親もだいぶ柔軟性が出てきたのか『社会勉強としてお願いいたします』と任された。そして今日が、美羽の面接日となっていたのだ。  夏のカフェは、いつも賑やかで、スミレ・ガーデンカフェに閑古鳥はもう鳴かない。  奥の小さなテーブル席は、加藤のお爺ちゃんの指定席。そこでアイヌの着物姿で座っているので、お客様も声を掛けてくれる。お爺ちゃんも忙しくなると、テーブルを空けて、レジ番までしてくれるようになった。夕方になると息子さんが迎えに来たりする。
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