② カラスに恩返し

8/9
前へ
/508ページ
次へ
 息子さんとお嫁さんも最初は遠慮していたけれど、こちらもお店のちょっとした手伝いや、アイヌとしての土地柄を言い伝えるということと、カララク・カムイと結びつけたガーデンの雰囲気作りに非常に役立ってくれているので、是非にと来てもらっているのだ。そのうちに、お爺ちゃんもスミレ・ガーデンカフェの仲間になっていた。そもそも、この家も庭も、お爺ちゃんが生まれ育った場所なのだから。居心地がいいのも当たり前で、余生をここで好きなように過ごして欲しいと舞と優大も、父も美羽も思っている。  そのお爺ちゃんが『また明日来る』と言って、息子さんと一緒に帰宅する。それを優大と一緒に見送った夕。 「はあ。夏休みにはいって、人が増えたな。舞、大丈夫か」 「大丈夫。せっかくつわりが収まって、好きなように動けるようになったんだから」 「でもよ。初めてなんだから無理すんなよ。女にしか言えないことは、うちの母ちゃんや義姉ちゃんに遠慮なく言えよ。わかったな」  これも毎日何回も言われる。女親がいない舞のことを思って、野立のご家族も非常に気を遣ってくれて、これ以上有り難いことはない。
/508ページ

最初のコメントを投稿しよう!

793人が本棚に入れています
本棚に追加