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「遠目にみると、姉のおまえに似てきたなと思って」
「なに。あちらも妻だって、見間違えそう?」
冗談交じりに夫に言ってみたが、彼はそんなふざけた言葉をやり過ごし、また真剣な眼差しで妹へと視線を定める。
「いるだろ。美羽のそばに。気がついていたか」
「うん。気がついていた」
石畳の小路でスケッチをしている美羽のそばには、一羽のカラスがいることが多い。舞も思っている。あのハマナスのカラスに違いない。カラク様が言っていた。僕のお友達は美羽ちゃんが気に入ったのだと。妹もわかっている。そして無邪気にその存在について、大人たちに話すことはなくなった。
舞とカラク様と同じように。彼女と彼だけの秘密があるのかもしれない。
「きっと美羽も認められたんだな。この庭の花守人。カムイがそばについているんだ」
「そうだね。私もそう思っていた」
妻の不思議な体験を、夫の優大も大事な思い出と考えてくれている。そう彼もカラク様に会ったひとりなのだから。
「もしそうなら。加藤のお爺ちゃんのお母さんと、舞と美羽のイナウは花だったんじゃないかな」
優大の言葉に、舞もそっと頷く。
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