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開店当初は、お祝いとして、エルム珈琲の上司に部下に同僚、父と長く取引のあった業者さんが駆けつけてくれた。舞の知り合いも、友人に、高橋チーフが家族連れで来てくれたり、花のコタンの先輩に同僚も様子見ついでに来てくれた。また父の長年の人脈か、エルム珈琲時代からツテのある情報誌編集部も呼び寄せ、道内全域に紹介されるような記事も掲載してくれた。
その効果が少しはあった。だが繁盛とは言いがたい。
父もわかっていて『一年目はこんなもの』と慌ててはいなかった。
逆に舞は焦っていた。開店したすぐの夏。庭半分しか花を咲かせることが出来なかった。手入れ途中の芝や土がむき出しのままのところが残り、舞が計画した『窓辺から見える範囲だけでも花を』という作戦でなんとか凌いだ。
父とカフェ開店の準備を始めて、花のコタンを退職して一年が経つ晩夏と初秋。舞は覚悟を決めて、二年目の庭を目指すため、必死に冬を越す手入れに精を注いだ。
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