⑦ スミレ・ガーデンカフェ 開店です

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 来年こそは、庭一面のメドウガーデンにする。白、青、ビビッドな赤、自然に生えているようにみえる『牧草地』のような庭にするんだ。夏にはあのバラが咲く。初めて出会った二十七歳の初夏、荒れる庭の片隅で馥郁悠然と自分が生きるためだけに咲き誇っていた『彼女』。そのとき、舞は思ったのだ。自然に自立して生きているその様に惹かれた。『私に初めて熱い思いをくれた花、貴女はこの庭の女王様だ』と。淡々と園芸の仕事に勤しんできたが、舞は植物を愛すのではない、このバラの誇りに見合う仕事をしたいと思っている。もうワイルドローズとも言って良いほどに強く逞しく美しく咲く『リージャン・ロード クライマー』のように、負けるものか。お父さんのお店を、花でいっぱいにして人に知ってもらう。その一心で……。思い通りにならない土壌と、思い通りに準備が進まないもどかしさと戦いながら、昨年のような中途半端な庭にはすまい、この敷地いっぱいのメドウガーデンにしてやる! スミレ・ガーデンカフェ一周年を迎える。そして二度目の春を迎える前に、二十八歳の冬を越す。
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