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① ニジュウネンとは、どれぐらいの時間!?
アーリーサマー。初夏の六月は、花が咲き始め、気温も緩み、空も爽やかで気持ちが良い。森と土と草花の香りに満ちて、森の木々の切れ目の向こうには、連なる丘が見える。丘の牧場にはサフォークの羊たちが走り回っているのが見える。
最近、背丈が伸びてきたアリウムとオリエンタルポピーが隣り合っているせいで窮屈に見える。舞は花鋏を手にし、紫色のポンポンのようなまん丸の玉を揺らすアリウムと、白いオリエンタルポピーの幾分かを花鋏で切り取った。
「これで、ひとまず終わりです。お茶に行きましょう」
「はい、行きましょう。今日も楽しみです」
舞は不思議な彼と一緒に歩き出す。昨年、庭の手入れを始めた頃に植えた芝生が青々と茂り、そこに散策用に並べた石畳の道を往く。
紫の大きなぽんぽん玉を揺らすアリウムと、白い花が戯れるようにそよいでいる。
「その花は捨ててしまうのですか」
「いいえ。お店に飾って、最後まで楽しみます。あ、今日もオレンジティーを父に頼んでみましょう」
虹色の髪の彼が嬉しそうに微笑んで、舞とずっと並んで歩いてくれる。
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