① ニジュウネンとは、どれぐらいの時間!?

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 今日も来客がない平日。お天気だけ良くて、庭の花だけが元気で、父が経営するカフェは閑古鳥が鳴いている。 「ただいま戻りました」  カフェ厨房の勝手口のドアを開けると、またそこで父が退屈そうにお皿を拭いているのかと思ったら、今日はバリスタスタイルで、お茶の準備を始めていた。 「そろそろ休憩だろうと思って、作っておいたよ。最近、舞はオレンジティーが気に入っているようだからね。気温が高いから、今日もアイスにしようと思っているんだけれど、どうかな」  また父の向こう、店内の窓席に、いつのまにちゃっかり座っている彼が、わくわくした瞳を輝かせて待っている。 「うん。私もアイスがいいなと思っていたところ」  父もこれまた嬉しそうに表情を崩した。 「そうだろう。お父さんは、舞のことはなんでもわかるんだからな」  娘の私じゃなくて、あの人が欲しがっているんだけれどね……。などとは言えず、舞はひっそりと苦笑いをする。  本日の午前の部、休憩時間。不思議な彼のために、舞はお茶をする。
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