② お花のお供え

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 そこにはもう、内に籠もって家族さえも信じられなくなっていた暗い少女の姿はなかった。舞が見続けてきた果てに見えるようになった、愛されて自信を持って太陽を見上げることを疑わない少女がいる。 「お父さんになにを言われてもいいの。私がそこに戻ることにして、私が決めたところに行くことにしたの。だから、心配しないで。それから……、また来るから、よろしくお願いします」  椅子から立って綺麗なお辞儀をした美羽を見て、舞も微笑むしかない。でも隣の優大はもう手の甲で、盛大に流れ出ていた涙を拭っていた。 「大ちゃんが、いちばん泣き虫なんだよね」 「ちゃんと来いよ。美羽が好きなもん、いっぱい作ってやるからな」 「お部屋はそのままにしておくね。飛行機代ぐらいお姉ちゃんが出してあげるから、冬休みも夏休みもおいで。空港までパパと迎えに行くよ」 「おう、大ちゃんも一緒にいくぞ!」  美羽も嬉しそうにしてくれている。でも徐々に徐々に、彼女の顔がくしゃっと崩れてきて、かわいい瞳からは涙がぼろぼろとこぼれ落ちてきた。
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