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そいつを最初に見つけたのは、チーちゃんだった。
草むらでチーちゃんが何かを見つけてニャウニャウ騒いでいたのを聞き付けた俺が、そこを見ると、薄汚いぼろ着れみたいなものがあった。
俺は、そのぼろ着れを足先でつついた。
「う・・ん・・」
そいつは、生き倒れたホームレスかなんかだった。俺は、そっと近づいて、そいつに声をかけた。
「おい、あんた、大丈夫か?」
その男は、くぐもった声で、何か言ったが、俺には、聞き取れなかった。俺は、聞き返した。
「なんだって?」
「その猫に、噛みつくのを止めるようにいって貰えないか・・」
チーちゃんがそいつの肩をガジガジと齧っているのに気付いて、俺は、チーちゃんをそいつから引き離した。
その男は、ゆっくりと体を起こした。
髭面だったが、思ったよりもだいぶ、若いのかもしれない。
それが、俺が、そいつを見て1番に思ったことだった。
こんな若いのにホームレスなんて、さぞかし、苦労してるんだろう。
俺は、少し、こいつに同情していた。
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