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「そうだけど」
俺は、答えた。
「何?」
「いや」
そいつは、俺に凄まれても顔色一つ変えることなく、淡々と言った。
「ちょっと、興味があっただけだ。あいつの恋人だときいたから」
あいつ?
俺は、刈谷の恋人と言われて、顔が火照るのを感じていた。
そんなわけが、ないだろ。
俺は、心の中で思いっきり否定していた。
俺は、奴の、家政夫に過ぎない。
それだけの関係だ。
「もしかして、あんた、刈谷の関係者?」
俺がきくと、そいつは、頷いた。
「駿の兄の刈谷 悠人、だ」
兄貴がいたのか。
俺は、初めて知った事実に驚いていた。
「マジか。あいつ、兄貴がいるなんて一言も言ってなかったし」
「兄なら、上にまだ、二人いる」
「マジか」
じゃあ、刈谷は、四人兄弟の末っ子だったのか。
どおりで、言い出したら聞かないところとか、いかにも末っ子だな。
俺は、妙に納得していたが、少し、イラついていた。
なんか、面白くなかった。
刈谷のこと、俺は、まったく知らない。
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