10 野良と新しいお友だち

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俺は、むすっとして言った。 「小暮 雅人、だ」 「おい、小暮」 不意に、誰かに呼ばれて、俺は、振り向いた。 この、無駄に、いい声は。 そこには、噂の主、刈谷兄が立っていた。 「帰ろう。家までうちの車で送ってやる」 「いや、結構です」 俺は、即答したが、ぴよこと、子犬が脇から出てきて言った。 「本当に?ありがとうございます。刈谷さん」 「僕たち、小暮くんの大親友で、今日も一緒に帰ろうねって、言ってたとこだったんです」 「何、いっ」 二人は、俺の口許を押さえつけてきた。 結局、俺とピヨコと子犬は、刈谷兄の車で家まで送迎されることとなった。 刈谷兄は、ピヨコと子犬に、愛想よく話しかけ、二人を家まで送り届けると、ネクタイを緩め、俺に向かって言った。 「ほんと、うざい連中だ」 「でも、少なくとも、俺よりは、あの連中の方が、あんたのこと、好きなんじゃね」 俺がいうと、刈谷兄は、にこっと笑って、言った。 「お前のそういうとこ、嫌いじゃないな」 「俺は、あんたが、大嫌いだ」 俺は、言いきってやった。 マンションの前まで来ると、俺は、車から飛び出し、少しだけ、振り向いて言った。 「送ってもらったことは、礼を言っとく」 そして、俺は、マンションへと駆け込んだ。 ややこしいことにならなきゃいいんだが。 俺は、エレベーターの中で、ため息をついていた。
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