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「またいつものやってるね」
遠藤くんが優しい目で私を見ている。
「そうだね」
私はとっさに俯いた。
いつも、目が合った瞬間に逸らしてしまう。本当はしっかりと目を見て話したいのに、私の中の恋心がそうさせてくれなかった。
「そういえば、加藤。夏休み中の部活は?」
宇田くんが横向きに座り直した。美佳の方に足を投げ出す。
「お盆だし、ほぼないよ」
美佳も体の向きを変え、宇田くんと向き合った。
「バスケ部もそっかー。俺もだ」
「甲子園なくなっちゃったもんね」
二人してため息をつく。宇田くんが首だけ曲げて、遠藤くんに話しかける。
「サッカー部は?」
「ないよ」
宇田くんの目を見て、即答する遠藤くん。彼の横顔は悲しげに見えた。
「だよなー。……俺、3年にほとんど会ってないわ。名前と顔覚える前に引退しちゃった」
宇田くんが空を見つめている。
「あれ? 有希も大会ないんだっけ?」
美佳が身体をねじって私を見た。
「うん。コンクール中止になっちゃった」
「そっかー。歌も危ないって言われてるもんなー」
宇田くんが深く頷いた。そのまま視線は床に落ちる。
そして沈黙。
誰かの口からため息が漏れる。もしかしたら私だったのかもしれない。
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