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食事が終わり、食べた食器を下げようと席を立ったら、「ユメ、あとはいいから」とお母さんに止められた。
コレもいつもの風景だ。
わたしは、食器を手から離し、そのまま洗面台へと逃げるように向かった。
お母さんのわたしに対する姿勢が、いつも他人行儀なのに苛立ちさえ覚えた。
学校に行く時間になり、わたしは玄関へ向かう。その時、カルガモの親子みたいにお母さんが後ろからついて来た。
「忘れ物はない?」
控えめな言葉で言ってくる。わたしは、ちらっとお母さんの顔を見て、「無いよ。行ってきます」と、我ながら素っ気ない態度で自宅を出た。
*
学校に着くと、自分のクラスがある、2年4組へ向かう。廊下は生徒たちで賑わっている。わたしは、賑やかに会話をしている生徒を横目に、スタスタとクラスへ向かう。
それに、この廊下にいる生徒たちのうち、誰がわたしと同じクラスメイトなのか分からなかった。
2年4組の教室の前に立つ。
わたしは、教室の扉を開ける前に大きく深呼吸をした。いつも、教室の中に入ろうとすると、急に鼓動が激しく鳴るからだ。
たぶん、過去の自分に何かがあったからだと思う。
……分からないけどね。
「よし」
自分に喝を入れて、教室の扉を開けた。
賑わっていた教室の中が、わたしが入ったことにより、シーンっと静まり返った。
何となく、既視感を感じる。前にもあったような……気がする。
静かになってしまった教室の中に入りーーー人の顔と名前は知らないが、自分の席だけは覚えている。
ホント、都合の良い記憶なことだ。
自分の席は、一番後ろの窓側の席だった。
席に着き、カバンを机の横に付いているフックにかけて、窓の外を眺めた。
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