ラスト5分の恋

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静かだった教室に活気が戻る。 何ごともなかったかのように、誰から会話を切り出したのか、一気に賑わいを取り戻した。 窓の外を眺めている時、またもや、教室が静かになる。 どうしたんだろう? と思い、わたしはちらっと、みんなの方に顔を向けると、わたしの背後に。 「こんにちは!」 「……え?」 知らない男子生徒が、人の良さそうな笑顔でそうあいさつをしてきた。 図々しいことに、わたしの前の空いている席に座る。変わらない笑顔を向けて。 「……え、誰?」 目の前にいる男子生徒にそう聞いた。 一瞬、男子生徒の表情が悲しげに笑ったように見えたが、すぐに人当たりのいい笑顔に戻ったので気のせいだろう。 「あ、オレ? オレは加藤健太、佐倉ユメさんと同じクラスメイトだよー!」 ヨロシクね! と、握手を求めてきた。 わたしは、彼の差し伸べる手を握り返すことはしなかった。 その代わり、彼にこう告げた。 「そう……。なら、わたしに関わらないで」 それだけ言い、わたしはカバンの中から小説を取り出し、ページを開いた。 「そっか、わかった! じゃあ、!」 彼は、明るい声で「またね」と言って、自分の席に戻って行った。 「……なんなのよ、あの子」 どうせ、わたしの出来損ないの脳みそは、今日の出来事なんて忘れるのに。 それから、加藤健太という男子生徒は、“毎日”わたしに話しかけてくるようになる。 そして、当のわたしは、案の定、彼の存在を綺麗サッパリ忘れてしまうのだった。
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