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1.家業のお手伝い!
ショートヘアのイケメン娘、明穂。
彼女の両親は、コンビニを経営していた。
当然こんなご時世なので、なかなか人手が足りていない。募集したって、人が来てくれない!
そういうわけなので、明穂は日々率先して、家業を手伝っていた。少しでも、両親の支えになれればいいなという気持ちで。
「ありがとうございます」
朗らかな笑顔を絶やさず、てきぱきと体を動かす。
レジ打ちに品出し。商品の発注からゴミの回収、悩みどころの在庫管理まで、いつだって一生懸命。
そのような事情があるために、明穂は所属している陸上部の活動を、いつもそこそこに切り上げていたりする。
もともと明穂は、練習は長時間ダラダラやればいいものではないと思っていたから、丁度よかったかもしれないけれど。
……でも、汗臭いのは、接客をする上でよくない。
なので。明穂は家に帰るなり、ささっとシャワーを浴びて、歯を磨いて体臭対策をして、そしていそいそと緑色の制服へと着替えるのだった。
右の胸のところに『七』と書いてある、某大手コンビニの制服に。
「よし、と。行こうかな」
最後に、鏡の前で髪を整えて、むに~っと表情を柔らかくしてみせてから、自宅に隣接した店へと向かう。
さぁ、お仕事タイムの始まりだ。
「やほー明穂。お買い物に来たよん」
「あ、沙弥~。いらっしゃいませ~」
沙弥が来た。
ぴょこぴょこと動くツインテは、もしかしたら本体なのかもしれないねと、明穂は思った。
ちょうど、家がすぐ側にある沙弥は、このお店の常連さん。ちょくちょく、いろんなものを買いに来てくれる。
沙弥は買い物ついでに、愛しの彼氏さんこと、明穂に会いに来たのだった。
「牛乳を買ってきてって、お母さんに頼まれたんだ~」
沙弥は牛乳とサラダを手に持っていた。
「そうなんだ。……ついでに『しちから』はいかがですか? 揚げたてでおいしい唐揚げですよ~。なんてね」
「むっふん。またまたぁ。そんな事言われると、食べたくなっちゃうじゃない。明穂ちんったら商売上手なんだから~」
そんなわけで、沙弥の晩ご飯は、唐揚げが一品増えたのだった。
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