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2.お手伝いアフター!
「助かったよ明穂。急に頼んで悪かったね」
「そう? それはよかったよ」
ヘルプを頼んできたお父さんが、明穂にお礼を言った。
急にアルバイトさんの都合が悪くなってしまって、シフトの穴埋めに娘の明穂が入ってくれたのだった。
お父さんにとって明穂は、とても頼もしく感じる娘に成長していた。
「後はもう大丈夫だから、上がって」
「うん。わかった。お疲れ様~」
そうして明穂はバックヤードに向かって、手荷物を取りに行く。
あくまでも家業の手伝いなわけで、正式なバイトではない。
そのため、給料なんてものはない。……強いて言えば、ちょっとばかりお小遣いが奮発されるくらいだろうか?
それでも明穂は別に、文句なんて言わなかった。もともと、そんなに欲しいものがあるわけでもないから。
明穂の両親は、業務を行う上で何かトラブルが起きたら、自分たちが全ての責任を持つと言ってくれたものだ。
(とは言うけどね)
両親に恥ずかしい思いはさせられない。明穂はそんな風に思うような、真面目な子だった。
だから、一生懸命頑張った。
マニュアルも熟読した。
その甲斐もあってか、店の中で両親に次ぐ程の経験を身につけて、今では新人さんの教育係まで任されていた。
背が高く、中性的で整った顔立ち。
スポーツが得意な、爽やかさ。
中学生なのにとても大人びた雰囲気で、礼儀正しくて、物腰も穏やか。
そして、教え方もとても上手くて優しくて、アルバイトさんからの評判がとても良かった。
もちろん、お客さんの人気も高い。
明穂はまさに、お店の看板娘的存在だった。
「さて、と」
自宅の玄関ドアを開ける。
明穂は、次の仕事(?)が始まると思った。
「ゆう〜。けん〜。ただいま~」
どたどたばたばたと、子供が勢いよく駆けてくる音がする。
明穂の弟たちだ。
長男で小学五年生の裕志と、次男で小学二年生の健斗。二人共、元気いっぱい。
「姉ちゃん腹減った~!」
「俺も〜!」
「はいはい。これから用意するから、待っててね」
夕飯を作るのは、基本的に明穂の役目。
でも、本人としては料理はあまり得意ではないとのこと。沙弥の方が上手だよと、よく言っていたりした。
(でも、そうも言ってられない。やるときは、やらなくちゃね)
明穂はコンビニの制服のまま、上にエプロンをつけて、夕飯の用意を始めるのだった。
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