シんだ友達とカラの箱

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 なぜ、わたしが彼女を発見するに至ったのかと言えば、その部屋の水槽で飼われていた生態の飼い主がわたしだったからに他ならない。  元はわたしが飼っていた魚たちだったが、あまりにも増えすぎてしまったのだ。  彼女にそのことを話したのは、休憩時間だっただろうか昼休みだっただろうか。  苦笑交じりにした相談――とは言えない。ただの雑談に過ぎなかった。  そして彼女は言った。家に所有し、持て余しているという水槽がある、と。 「あなたさえよければ」  と申し出てくれたのは、意外にも彼女の方からだった。  だから、自分の住むワンルームマンションにはとても置けそうにない大きさの水槽を、彼女の部屋の一角ごと間借りさせてもらっていたのだ。  その対価は、餌代と彼女との時間だった。  離婚する前から家を空けることが多かったという『旦那』という隙間を埋めるための。
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