シんだ友達とカラの箱

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   友達が殺された。  発見したのはわたしだった。  会社の同僚で、先輩で上司でもあった彼女は九十センチの水槽に頭から突っ込んだ状態で溺死していた。  傍らに置いてあったサイドテーブルの上には遺書が置かれていたという。そしてキッチンからは睡眠薬の空き瓶も見つかった。そのことから、異常に思われた彼女の死は、警察によって自殺と断定された。  ただ、それだけであるならば、異常とまでは言えなかったかもしれない。  彼女の死が常軌を逸していると言われるのは、彼女が飼っていたと思われた水槽の中身に関係している。  水槽の中には数十匹の熱帯魚が生息していた。  わたしが知る限り百匹には満たないはずだが、五十は有に超えていたはずの。  その全ての魚を、彼女は全て床に放り出し、水面に茂る水草の間に顔を押し込むようにして死んだのだ。  床に放り出された魚たちは、足下に丁寧に並べて。  死体の発見は早かったというが、当然魚たちは一匹残らず干涸らびていた。  彼女は水槽の魚たちと一緒に心中したのだ。  旦那に出て行かれて、一人暮らしとなった彼女が自らの人生に終止符を打った。
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