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「夏休み、彼氏連れて帰って来なさいよ。お盆くらい休みでしょ?」
いやいや母よ。確かに休みではあるけれど....とは思いつつ、社会人になってからなかなか帰れていなかったのも事実だった。
母からそう言われたことを彼に伝えると、案外すんなり承諾が得られ、遠路はるばるド田舎にあるわたしの実家へとやってきた。
もちろん電気は通っているし、インターネットも繋がるけれど、何度も言うがド田舎なのだ。楽しめることと言えば、せいぜい川遊びや山登り。別段農家をやっているわけでもないうちの両親が趣味でやっている家庭菜園を少し手伝うくらいだ。わかっていたものの、ここで暮らしていた私ですら、この状況にはかなり参っていた。ましてやこの暑さ。カラダ全体が煮えきっていることは容易に想像できるだろう。
「なんでお前の部屋、扇風機しかないの?」
「交換条件だったの。一人部屋にする代わりに、テレビとかクーラーは置かないって。今思えば、籠らせないようにする親の策だよね」
「なるほど」
何せこの暑さだから、正直くっついているのは暑いのだが、扇風機の風がくる範囲を考えると、くっつかざるを得ない。わたしたちはベッドによりかかり、扇風機をまっすぐに見つめながら、ポツリポツリと言葉を交わしていた。
「・・・ねぇ。ブラだけになってもいい?」
もはやできるだけ布をはぎとりたい。タンクトップですら我慢できない状況だった。
「・・・・お前の部屋なんだから、いいだろ」
それもそうだ。この空間だけは、誰に何を言われることもない治外法権エリアだ。
隣人の許可もおりたところで、汗ばんだタンクトップを脱ぎ捨てる。さっきよりは心地よい風を直に感じることができた。
扇風機の羽、下で揺れる風鈴、そして外からシネシネ聞こえる蝉の声。
その1つ1つは風情あるものなのに、そこに暑さが加わるだけで耳障りな不協和音になる。
「お前、そんなに胸あったか?」
「もうエッチ!」
「不可抗力だろ」
こんな狭い部屋で、一体わたし達は何をしているんだろうか。本人からOKが出たとは言え、せっかくの休みをこんなところで過ごさせていることに罪悪感が募る。
「たしかに、サイズは上がったかもしれない.....」
「・・・そうか」
再び不協和音が鳴り響く。
そしてその時は突然訪れた。
「あっ.....ちょ、まっ..........!」
いきなり重なった唇は何度も角度をかえ、熱い舌が口の中ねじ込まれる。
「っん...ぅ……した、いるから聞こえちゃ」
「…声抑えれば大丈夫だろ」
何が彼を焚きつけたんだろうか。熱を帯びたその眼差しに、もう拒むことはできなかった。
キスだけで蕩けきっていくのがわかる。首筋には汗が流れ、どんどん体温が上がっている。
正直、そこからの記憶はかなり曖昧だった。
ベッドに座らされ、脚を開いて露わになった秘部をひたすら舌で弄られていた気がする。時折当たるヒゲがくすぐったく、どうにか顔を押しのけようとするも、全身の力が抜けきりそれは叶わなかった。
「もういいだろ」
わたしはベッドの上にそっと倒され、彼はそそり勃つ下半身を取り出す。いつの間にやらでてきた避妊具をかぶせ、汗と愛液で溢れた蜜口を一気に挿す。
「ぃやっっ///激しっっ!」
「声だすなっ...聞こえんだ...ろっ」
内側を擦るように出し入れすれば、中から蜜が溢れでる。私たちの動きでベッドは軋み、擦れる肌の音と息遣いが湿度の高い部屋に広がっていく。さっきまでの不協和音は、私たちを隠すように、さらに音量をあげてガンガンと頭の中に鳴り響く。一方で、時より何の音も聞こえず、時が止まって、世界で私たちだけが動いているような錯覚にも陥った。
「....ッく....」
「んぁ…っ、…んっ、もうイッちゃいそっ...」
「..あぁっ....俺も....ヤバイ……ッ」
接合部をこすり合わせ、さらに加速した腰が打ち付けられる。異物を離すまいと絡みつくナカで、肉棒が一層の質量を増す。
「っ…!」
「あぁぁぁッ…!!んぅぅッ///」
「ぐッ」
ドクドクと脈打ったそれが、薄い膜越しに白濁の液を注ぎ込んでいるのを感じた。
息が整うまでにどれくらいの時間が経っただろうか。ようやく扇風機の風を感じ始めた頃には、だいぶ陽が傾いていた。
「のど、渇いたね」
「・・・そうだな」
ちょうどその時、私たちのひと運動が終わるのを待ってましたと言わんばかりのタイミングで、おやつにしましょーという母の声が下から聞こえた。
こうやっていつも母が声をかけてくれたなと懐かしさを感じたのも束の間、ひとつの可能性に冷や汗が止まらない。
「絶対、気づかれてるよ下に.....」
「・・・・かもしれないな」
まるで白昼夢のような、夏の出来事だった。
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