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「………俺はよ、お前のことも玲央のこともどっちも大事だ。好きな奴が居るなら、男とか女とか関係なく応援してやりてぇよ」
「………親父…」
「こそこそしてないで、正々堂々と俺に言えばよかっただろうが」
はぁ…と央一郎は大きくため息を着くと、どさりと座り込んで真治の顔を覗き込んだ。
「俺の事が信用できねぇのか?」
「そうじゃない。親父を……悲しませたくなかった。息子同士が付き合うだなんて…」
「確かに驚いたけどな。だが……お互いに思い合ってるんだろ?」
「ああ。勿論だ」
央一郎の目を正面から捉えてキッパリと言い切った真治の言葉に嘘はない。
「なら、俺はお前達を見守るだけだ」
「親父………」
「だがな、玲央を泣かせたら許さないぞ」
央一郎はふっと笑うと真治の頭をガシガシ撫でた。
親父は器が大きいな……。
見守るだけだなんて、そうそう言えるもんじゃない。
俺と玲央の本気を信じてくれてるんだ……。
無条件の父親の愛情に真治の胸は熱くなる。
央一郎を悲しませるとか怒らせるとか、そんなことを考えていた自分が恥ずかしかった。
殴られた頬は痛く、奥歯がぐらぐらしているような気もするが……それも愛があるからこその痛みだ。
「俺が本気で殴ってそんなもんで済んでるんだから、お前も強くなったな」
「いや、普通に痛いよ。多分奥歯いっちゃってるし……」
「俺に隠し事して悪いことするからだ。その位は我慢しろ」
真治は返す言葉もなく、殊勝にはいと頷いた。
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