第10夜

10/21
2784人が本棚に入れています
本棚に追加
/266ページ
音を立てないようにそっとドアを開けて部屋に入ると、玲央はベッドですぅすぅと寝息を立てて眠っていた。 起こさないように気を付けながら額に軽く触れてみると、熱があるようでその体温は高い。 今回玲央を危険な目に遭わせてしまったのは、自分の不注意と甘さによるものだ。 こうして無事に帰って来てくれたが、一歩間違えば玲央に二度と会えなかったかもしれないと思うと、自分の不甲斐なさに腹が立つ。 もう二度とこんな思いをするのは御免だ。 何があっても玲央を手放さないよう、守り抜かなければ………。 『今夜は一緒に寝てくださいね』 あの時玲央とした約束を真治は思い出す。 あれはきっと、俺が無茶なことをしないように言ったのだろう。約束があれば俺が守ると信じてくれていたのだ。 俺の方が玲央に守られているのかもしれないな……真治はそう思う。 真治は椅子を持ってきて、玲央のベッドサイドに置いてそこに腰を下ろした。 玲央の顔の横に無造作に投げ出された手首には包帯が巻かれている。 真治はその上にそっと自分の手を重ねた。 確かに玲央がここに居る。 玲央の体温を感じて、真治の張り詰めていた気持ちが緩んだ。このまま少し玲央の隣で休むか………。 目が覚めた時に居てやらないと寂しがるかもしれないしな……。 椅子に座ったまま、上半身だけ玲央のベッドに体を預け、真治は目を閉じた。 玲央が寂しがると言うより、目覚めた時に自分が真っ先に玲央に会いたいだけなんだよな……。そんなことを思いながら、真治はゆっくりと意識を手放した。
/266ページ

最初のコメントを投稿しよう!