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シーン1 真夜中の縁日
ナレーション
「じっとりと寝汗をかく真夏の熱帯夜、時刻は草木も眠る丑三つ時。アブラゼミの合唱団もしばしの休憩、あたりはしいんと静まり返っております。ここ八城神社の境内では、朝から晩まで縁日が行われており、たくさんの人で賑わっておりましたが、今はずらりと並んだ出店を覆う、薄汚れたブルーシートが風に煽られわずかに揺らいでいるだけです。さて、人が寝静まり誰もいないはずの神社に、ゆらり、ゆらりとどこからともなく不気味な影が現れました。
真夜中の神社を支配するのは、この世のものではありません。見るも恐ろしい異形の者、永遠の時を生きる住人、妖怪達なのです」
境内の奥から妖怪達が現れる。
ろくろ首 「あ〜!やっと出てこれた〜!首が疲れた疲れた!」
骸骨 「お前の首が無駄に長すぎるからだろーが、ろくろ首。うるせーから耳元で騒ぐな」
ろくろ首 「なに〜!あんたには耳なんてないでしょ!?
骸骨なんだから!あんたの方こそ歩くたびにガシャガシャ言ってうるさいったらないよ!」
骸骨 「俺はお前と違って骨太だから仕方ないんだよ」
座敷童子 「はいはい、痴話喧嘩はやめましょうね、お二人さん。
せっかく久しぶりにみんな揃ったんだからさぁ」
ろくろ首 「そうは言ってもさ、座敷童子〜!骸骨のヤツ、
ほんっとにムカつくんだよ!?」
河童 「あのー、皆さん。お話中にすみません。ちょっと
いいですか?」
座敷童子 「どした〜?河童ちゃん?」
河童 「お皿が乾いてしまったので、ちょっとお手洗いに
行って来てもよろしいですか?」
座敷童子 「相変わらず自由だな〜河童ちゃんは。行っといで〜」
河童 「ありがとうございます。ちょっと失礼します」
ろくろ首 「大体あんたはデリカシーってもんがないのよ!
服も着てないしさぁ!」
骸骨 「骸骨なんだから服なんて必要ねえだろ。お前の方こそ
その厚化粧なんとかしろよ」
ろくろ首 「き〜!言ったわね〜!」
座敷童子 「も〜やめなってば〜。今日はみんなで縁日を
楽しむんだからさ〜仲良くしようよ〜」
河童 「あのー、皆さん。お話し中すみません。ちょっと
いいですか?」
座敷童子 「あれ?河童ちゃん、お手洗い行ったんじゃないの?」
河童 「それがですね、お手洗いに行こうと思ったら、ちょっと変なものを見つけまして」
ろくろ首 「変なもの?」
河童 「はい、お手洗いのすぐ脇にある茂みが何やらちょっと
ガサガサ動いてまして」
骸骨 「猫か狸じゃねえか?」
河童 「それにしてはちょっと大きいんですよ。もしかしたら
幽霊かも知れないのでちょっと怖くて」
座敷童子 「妖怪が幽霊を怖がってどうするの〜」
ろくろ首 「仕方ないな、あたいが首を伸ばして見て来てあげる!」
座敷童子 「相変わらず便利だね〜ろくろ首」
骸骨 「よしとけ、お前の厚化粧にビビって逃げちまうぞ」
ろくろ首 「あんた後でバラバラになるまで締め上げるからね!
じゃあ、行って来るよ!」
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