16

6/6
63人が本棚に入れています
本棚に追加
/83ページ
「その人の名前分かる?」 「ああ、佐竹史也って言ったかな。ソフトの売り上げは子供と奥さんが受け取っているらしいんだ。本人はいったい何処へ行ってしまったのかな」  やっぱりタケさんだ。達彦はゾクゾクした。日雇い労働者なんかにならなくても十分生活出来るじゃないか。  達彦はお父さんを見送ると丸央に今の話をした。丸央はビックリした様子だった。それはそうだろう。 「彼女に本当のお父さんの名前だけ教えて貰ってもいいか?もし佐竹史也だったら、明日、病院に彼女も連れて行こう。タケさんだって子供に迷惑を掛けてないことが分かれば会いたいに違いない」 「うん」  丸央はスマホを持って彼女に電話をした。そして「あ、芽衣か?突然で悪いが本当のお父さんは史也さんって言うの?」と訊いた。  丸央の緊張していた身体がみるみるうちにほぐれていく。達彦の顔を見ると首を縦に振った。 「明日、予定ある?無かったら一緒に出掛けないか?11時に迎えに行くよ。お父さんだと思われる人が入院してるんだ。俺も今日知ったばかりなんだが、弟は前から知っていたらしいよ。兎に角、会ってみてほしい」  達彦はいきなりタケさんに会わせるのはよくないと思った。お母さんのようにレストランで待っていて貰おう。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!