問題だらけの1日

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颯太は公園でウンウン頭を悩ませていたが一向に起死回生のアイデアが出てくることはなかった。 しかし公園でウンウン唸っていても仕方がない。とりあえず動かなければならない。そう思いベンチから勢いよく立ち上がり走り出した。 颯太はまず近くにあるバイト先の居酒屋へと足を運んだ。 「すいません!バイト代前借りできないですか?」 入り口を開けた瞬間開口一番店長に伝える。準備中の看板を出していた静かな居酒屋に突然訪問者が現れ、店長は慌てて入口の方へと顔を向けた。 店長は困惑しつつも穏やかな笑顔で「どうしたんだい?とりあえず座ろうか。」と話を聞く態勢を作ってくれた。いつも真面目な颯太がそんなお願いをするにはそれなりの理由があるのだろうと察してくれたのである。 颯太が一通り話し終えると「それは困ったねぇ…」と店長は一緒に嘆いてくれた。話の内容は非現実的だったが日頃真面目に仕事をしている颯太が突然そんな嘘をつくとはどうにも思えなかったようだ。 「ちょっと待っててね。」 そう言って店長は店の奥へと入っていった。 颯太がしばらく待っていると店長は封筒を持って戻ってきた。 「とりあえずこっちが今月末に払う予定だったお給料。それでこっちの封筒が僕が君に個人的に貸す分。」 そう言って2つの封筒を颯太に手渡した。 「そんな…店長さんからお金を借りるなんてできないですよ…」 颯太が慌てて片方の封筒を返却しようとしたが、店長は黙って首を振った。 「いつも頑張ってくれてるからね。少ないけどなんとか彼女さんを救う為の資金にしてくれたら…」 「すいません…ありがとうございます!」 颯太は深々と頭を下げて店長に心からのお礼を伝えた後店を出て再び走り出した。 その後も颯太は恥を忍んで片っ端から知り合いに電話をした。その甲斐あって走り回って集めたお金は100万円を超えた。突然お金を貸してくれと言って集めることのできた額としては上出来すぎるほどである。 しかしそれでも犯人の要求する1億円には遠く及ばなかった。 そうして電話帳の上からかけていった電話はいよいよ最後の1人渡辺を残すのみになった。 "さっきあんな切り方したからかけ辛いな…"と思いながら電話をかける。 こちらから何かを言う前に向こうから物凄い勢いで言葉が飛んできた。 「先輩、ヤバイっす!まじヤバイっす!助けてください!」 あまりの大声で音が割れたので、慌てて電話の音量を小さくした。とりあえず渡辺が異常に慌ててることだけは伝わってきた。
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