夏を教えてあげる

アキはハルが好き

君の好きな夏の裏には、男の影がちらついている。

ハルの楽しい夏は、誰との記憶？

同級生か、先輩か、男友達か、元彼か、今も好きなのか知らないが、確実に恋をしていた表情をして、俺の心を抉る。

君と夏を楽しむには、俺の知らないことが多過ぎる。

だから、それほど夏は嫌いじゃなかったけど、お前の夏の話は不機嫌にならざるおえなかったし、彼女の中の誰かに重ねられるのは嫌だったから、頭ごなしに否定した。

多分、距離感がおかしいのも、彼女の中の誰かと彼女自身が元々こんな関係だったから。

重ねられている俺は、そいつと同じ扱いをされている。

俺のことを深く知ろうとしないのも、俺自身を必要としているわけではないから。

必然的に、奥手な俺はハルのことを知る機会がない。

夏を楽しみたいという純粋な感情に触れるたびに『ハルは、俺を誰かさんに重ねて、いつかの夏を懐かしみたいだけ』そんな気持ちが見え隠れして、胸が激しく軋んだ。