ハルは夏が好き

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ハルは夏が好き

吸い込めば胸の奥まで熱くなる酸素とか、バーベキューでもできそうな鉄板の上とか、じわじわ肌を焼く太陽とか、その中で水遊びをするのが楽しいこととか。 そんな夏が私も大好きだ。 「だからね!出かけよう!?」 君に私の好きな夏を教えてあげたいのに、頑なに外に出ようとはしない彼。 夏が嫌いらしい彼は、私が夏の話をするだけで嫌な顔をする。 「やだってば、アイスなら家の中で食えるじゃん」 そこそこ田舎で生まれ育った私は、バス停横の売店で買ったアイスキャンディを日陰で食べるのが、どれほど美味しいのか知っている。 ただ、それを力説したところでクーラーに慣れてしまった彼には、もう響かないのかもしれなかった。 「いや、アキも行くの!」 無理矢理家の外に引きずり出せば、彼は悪態をつきつつも、一人暮らしの部屋の鍵を閉めた。 彼……アキは、『お前はハルって名前なんだから、春を好きになれよ』なんて言う。 たしかに春の陽気は好きだけど、夏のこのワクワク感には勝てないのに。 というか、それならアキも冬じゃなくて秋を好きになれよ。と思っていることを言えば、まためんどくさいことになるから言わないのだが。
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