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第1話:天使が降りてきた
ここは神の間。いつからそう言われているのか、いつかの神がそう言わせたのか分からないがここは神がいるから神の間なのだ。
神が生まれたから人間が生まれたのか、人間が生まれたから神が生まれたのか。
今や誰も――そう。神すら正解は分からないがここに神がいるのは確かな事実だ。
周囲の壁は緩やかな曲線を描いているようにも見えるし、角度を変えると普通に直角の壁にも見える。
もし外から見ればまるでボールの中にでもいるかのような見た目かもしれないし、豆腐型の四角い見た目かもしれない。
ただ、ここに外という概念があるかは不明である。
この空間の中心には真ん中にぽっかり穴の空いた円卓が置かれ椅子は八つ。そしてその椅子は今七つ埋まっている。
そしてその椅子に座っている者は何にイライラしているか分からないがムスッとしている者や、隣の者と談笑している者、様々であったが、全員に共通しているのは全員人型、人間と同じ見た目なのだが全員人間離れした美しさだった。
町を歩けば全員が振り向く様な美形の男女がここには揃っている。
そしてこの部屋で唯一、地面から真っすぐ垂直に伸びた壁のある所に煌びやかな装飾がそこらに施された椅子があった。
そこら中に色とりどりの宝石がちりばめられた豪華な椅子ではあるが、決して下品ではなく上品な気品を漂わせる美しい椅子だった。
そしてその玉座にも見える玉座には、白いローブを着た男が優雅に腰かけていた。
腰まで伸びた長い金髪は、一目見ただけでこの世の物ではないと理解できるほど、神秘的な光を帯びている。
この空間にあるのはこの玉座と円卓だけで全く生活感が無い。
この空間は人間が理解、認識することは出来ない空間なのだろう。
そして、おもむろに玉座に座っている男が口を開いた。
「世界の管理者を神と呼ぶようになってから永遠にも匹敵するほどの年月を私は過ごしてきた。しかし、私は間もなく死ぬ。これは皆も知っている事だろう。
ゆえに私が死ぬ前に次の神を決めなければならない。
この重責、最も強い者が担うのが当然の事であろう。
かと言って話し合いをしたところで決着が着くはずもない」
そう言うと、神は自身の胸に手を当てた。
すると一瞬、金色に胸元が輝いたかと思うとその手には金色に輝く一枚のカードが出現した。
そのカードはフワフワと神の手のひらの上で浮遊している。
「お前たちには、互いにこのカードを奪い合ってもらう。そして全てのカードを集めし者のみ再びここに戻ってくる事を許す。
さぁ行け、天の使いよ。
さぁ行け、我が身から生まれし子供たちよ。
その手に栄光を掴むため、存分にその力を振るうがいい」
神が話し終えると円卓に座っていた七人は次々と下界へ降りて行った。
まるで親鳥から巣立つ雛鳥の様に。
下界へ降りるとき、彼らの背中には色とりどりの翼が生えていた。
それぞれの輝きを放つ天使たちの軌跡は、まるで虹の光の様だった。
もし天から翼をたずさえた人間が降りてきたら我々はどう思うだろうか。
ある者は世界の救済であると嬉々として涙を流すだろう。
ある者は天からの裁きだと絶望の悲鳴を上げるだろう。
だがどちらにしろ、我らは声を揃えてこう言うだろう。
「天使が降りて来た」と。
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