充電

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シャワーを浴び終え、バスタオルを身体にまとって出てくると、ベッドの上には、下着姿の、え~と「まいちゃん」だっけ? 準備万端で待っててくれた。 軽く唇をあわせ終えたあと、僕はギュッと力を込めて彼女を抱きしめる。 肌の柔らかさが心地よくて、接している身体中から体温を感じた。 ラブホのふかふかのベッドの中で過ごす90分だけの関係。 90分(20.000円)を終えたら、以降、お互い、一生会うことはありえない。 だから、いいんだと思う。 「あと5分だけ、このまま抱きしめさせといて」 「ん・・・」 ベッドの上で、彼女の腰と背中に手をまわして、再度、力を込めて抱きしめた。 誰でもよかった。いや、妻以外なら、誰でもいい。 こうして、ギュッとして、人の体温を感じさせてほしい時が、年に1度くらいあるんだ。 何て言ったらいいのだろう? とにかく怖いんだよね。 まとわりついてくる、大きな黒い塊のようなモノに押しつぶされそうな感じって言うのかな? これが、疲労感とか、孤独感とか言うのかな? みんな、こういうのと闘っているのかな? 誰かに触れることで、黒い塊が小さくなっていく気がするんだ。 で、触れる相手は、申し訳ないんだけど、妻では駄目なんだよね。 「ねー。もう15分たったよ」 耳元で起床を促す声がした。 「あ・・・」 完全に眠ってた。うたたねどころじゃなくて、15分間、爆睡してた。 いーのかなー? あたしのせいじゃないよーって言いたそうな女の顔が僕の目の前にある。 「ありがと・・・・・」 瞼がようやく、ちゃんと開いてくれそう。 身体の調子、いや精神的な調子かな。回復に向かってる感じ。 黒いモノが何やら小さくなってる気がする。 「5分毎に声かけたからねー。全然起きないからさー」 「ごめん、ありがとう・・・」 「んー? 大丈夫? 疲れてる?」 身体に力がちゃんと入る。リセットされたみたいだ。 「大丈夫! おかげで、すごい回復したー!」 元気になった僕は、狼モードにチェンジして女の胸に顔を埋める。 ワチャワチャ、ベタベタしながら思うんだよね。 誰かこう、5分でいいから、服の上からでいいから、ギュッと抱きしめさせてくれるだけでいいから、ねぇ、そんなお店を作ってくれないかな? すでにあるかな? 別にオープンでいい。仕切りとかいらない。 後ろに怖いおにーさん方が、見張っててくれていいから。 5分間、ギュッとして、人の体温を感じられたら、僕のこの変な病気は進行が抑えられそうな気がする。 ねぇ、誰か、僕と同じ病の人はいない? ねぇ、誰か、5分抱きしめ1000円とかで、お店、作ってくれないかな?
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