朝のルーティン

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朝のルーティン

居間に入ると パンの香ばしい香りが鼻を包んだ 「朝食はパンなの?」 「ええ」 母は食パンの入った袋を指先で押して私に差し出した 「ふーん…今日は手抜きかぁ…」 「手抜きというのは、レンジで5分の冷凍食品だと思うの。違くて?他に異論は?」 正論だと思う 「ないない。冗談だよ。たまにはパンもいいよね」 「でしょ?あなたがパンを望んでいる事を事前に察知したから今日はパンにしたのよ。礼はいらんぞ?」 嘘こけ…… 美晴はトースターに食パンをセットした テーブルには バター、苺ジャム、ブルーベリージャム、ピーナッツバターが置いてあった 種類豊富で素晴らしい… どれも美味しそうだし、朝から迷ってしまう 「さっきは騒がしかったけれど…何かあった?」 悩んでいた所に母が問いかけた 「ん?別に。猫丸と遊んでただけ」 「…生き物には優しく接してあげてね。動物虐待はダメよ?」 「こっちは名誉棄損(めいよきそん)だっての」 私は無実だ 「あんまりイジメてると、徳川綱吉に怒られるわよ?」 「その人もういないでしょ?」 『生類憐れみの令』だっけ? 知らないから 「というか…あなたまだあの病気続いてたのね?動物の言葉がわかるっていう…」 「特技だよ特技…病気じゃないから」 「病気でしょ?でも…将来動物病院のドクターにでもなれば儲かるかもしれないわね」 「ヤダよ…私は猫丸の世話だけで充分なんだから」 「そうね」 母は楽しげに微笑みを浮かべた 朝は大体この調子だ
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