カレーライス

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「同じ……なんだ」 「なにがですか?」 「味が全く。おふくろの味」 「だから、誰のっすか? 先輩さっきから何を言ってるんですか!?」  白シャツはいらだっているようにも見えた。その場からいなくなりたいのか、すでにもう腰は半分イスから浮いている。スプーンは、カレーライスの真ん中に刺さったまま。 「全部……同じ……家もレトルトもお店も、全部……そんなことあるか、なあ、あるか!?」 「し、知らないっすよ!」  ついに白シャツは立ち上がった。ガタン、とイスが後ろに倒れる。店中の視線が2人のテーブルに突き刺さった。  そのとき、何かを思い出したのか、白シャツは声にならない声を出しながら後退りする。やがて隣のテーブルに当たると絞り出すような声を発した。 「いや、いや、先輩……先輩のお母さんって……この前……」 「ああ、死んだんだよ」  そう呟くと、ストライプ柄は口を大きく開けてスプーンに乗ったカレーを口の中へと入れた。 「先輩? 先輩!」  ーーその味が果たしておふくろの味だったのかどうかは最後までわからなかった。2人は周りの視線にいたたまれなくなったのか、すぐに店を後にしたからだ。だが、ストライプ柄の表情を見たあの白シャツの顔は、異様なものを見たように怯えていた。  ほとんど手つかずのカレーライスが運ばれていく。整えられたテーブルは、次のお客を静かに待つ。  一息つこうと水を口に含む。が、すぐに吐き出してしまった。  ほんのりと香る桃の味が、味蕾を転がっていった。
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