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帰宅して早々、疲れた体を自室の椅子に預けると壮一は今日あったことを思い返した。
窓口を長時間離れたことは、案の定駅長から叱責されたし、五分王子と話していたことで女性職員からは質問攻めにあった。
それらすべてが頭に残らず通り過ぎたのは、あの少年の話を聞いたからだ。
現実の駅はいつも喧騒の中だ。多くの人が毎日改札を行ったり来たり。壮一たち駅員の役目は、彼らを問題なく進ませること。
だが、誰だってその内に抱えているものがちゃんとあるのだ。
物思いに耽っていると、階段を駆け上がり隣室の扉が閉じる大きな音がした。隣は息子の裕の部屋だ。以前はあんな物音をたてる子じゃなかったのに。
いや、もしかしたら父親への不満を示してしるのかもしれない。
「一人一人のドラマ、か」
あの少年には及ばないかもしれないが、それは壮一や裕にもあるのだろう。
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