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「ごめんな、心配させて」
そういえばまろんは、僕の体調が悪い時はとことことそばに来て、見守ってくれる猫だった。僕が元気な時にはとことん塩対応だが、弱ってる時は優しかった。
どうしてまろんが戻ってきてくれたのか、ようやく分かった。
きっと空の上で、弱っている僕を見つけたから。「まったく、いつまで落ち込んでんだにゃ」なんて言いながら、空から降りてきてくれたんだ。
だったら伝えるべき事は「いかないで」でも「ごめん」でもない。
「ありがとう、まろん」
伝えた瞬間、どっと涙があふれてきた。
今まで押し込んでいた気持ちのすべてが、滴となってあふれてくる。
にじんだ視界の中で、まろんは花のように笑った。
「どういたしましてにゃ」
ごしごしと目をこすり、再び顔をあげた時。
もうまろんはいなかった。
部屋にはゆかたと、髪かざりの鈴だけが残っていた。
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