ひとにゃつの思い出

　死んだ猫の話をしようと思う。

　僕は日本画家、久保 直樹。29才。
　美術大学に在籍していた頃から「猫」をテーマに作品を描き続けていた。23才の時、若手日本画科の登竜門「雪月花 国際日本画公募展」で特別賞を受賞し、念願の日本画壇デビューを果たす。現在は画家として生計をたてている。

　だが去年の冬、僕の人生を揺るがす大事件が起きた。

　まろんが死んだのだ。