ひとにゃつの思い出

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 まろんはメスの三毛猫だ。  初めて会った時、まろんは冬の雨の中、凍えながら雨宿りしていた。ガリガリに痩せた猫だった。雨が止むのを縮こまって待っている様子が、なかなかチャンスに恵まれない自分と重なり、いたたまれなくなった。  このままにはしておけない。  体が勝手に動いていた。    ぐったりした猫を抱き上げ、部屋に入れた。エサをたらふく食べさせ、ひっかかれながら風呂に入れ、暖かいところで寝かせた。一晩たったら、もう離れがたくなっていた。  貧乏美大生時代から、僕はずっと昭和情緒あふれる木造アパートに住んでいた。ひどいボロアパートで、ふすまは破れ、畳は黄ばみ、柱は傷だらけになっている。雨漏りしているところもある。猫一匹暴れたところで、誰からも文句は言われまい。  こうして僕は、まろんと一緒に生活を始めた。
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