ひとにゃつの思い出

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 寿命だった。死期を悟ったまろんは、僕に死ぬ瞬間を見せることを嫌がり、独りでひっそりと黄泉の国に旅立ったのだ。  空き地に穴を掘り、まろんを埋葬した。  世界から色が消えたような気分だった。  涙すら出なかった。  そして僕は作品を描けなくなった。  作品の構想が浮かばない。  制作に没頭できない。  絵筆が止まってしまう。  どうしても描けない。  どんなに焦って自分を叱咤しても、描けないものは描けない。  冬を越え、春になっても、僕の状況は改善しなかった。画壇からも疎遠になりつつあった。  そして僕は夏を迎えた。  まろんのいないモノクロの夏を。
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