8月15日

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「うにゅ…」  うっすらと少女が目を開けた。  ごしごしと目をこすり、くああっと大きなあくびをする。丸めた手でかしかしと耳を掻く。  少女はぼんやりと顔をあげた。僕と目が合った。  そしてぱあっと花が咲いたように笑顔になった。 「直樹(にゃおき)! 直樹だにゃ―!」  跳びかかってくる少女。思わず僕は逃げた。  部屋の隅まで逃げてから、まじまじと少女を観察する。  栗色の髪の毛。  ぴんとした猫耳。  あの猫の面影がある。 「まさかおまえ、まろんなのか…?」 「気付くのが遅いにゃ」  少女は腕を組み、ふんと鼻を鳴らし、馬鹿にしたように笑った。しっぽがぴこぴこと動く。  そういえば今日は8月15日。お盆だ。  ご先祖様の霊が帰ってくるとはいうけれど。  まさか、まろんまで戻ってきてくれるなんて。
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