15人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
「うにゅ…」
うっすらと少女が目を開けた。
ごしごしと目をこすり、くああっと大きなあくびをする。丸めた手でかしかしと耳を掻く。
少女はぼんやりと顔をあげた。僕と目が合った。
そしてぱあっと花が咲いたように笑顔になった。
「直樹! 直樹だにゃ―!」
跳びかかってくる少女。思わず僕は逃げた。
部屋の隅まで逃げてから、まじまじと少女を観察する。
栗色の髪の毛。
ぴんとした猫耳。
あの猫の面影がある。
「まさかおまえ、まろんなのか…?」
「気付くのが遅いにゃ」
少女は腕を組み、ふんと鼻を鳴らし、馬鹿にしたように笑った。しっぽがぴこぴこと動く。
そういえば今日は8月15日。お盆だ。
ご先祖様の霊が帰ってくるとはいうけれど。
まさか、まろんまで戻ってきてくれるなんて。
最初のコメントを投稿しよう!