変態

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「どうした、悩みか?」  どさっと僕の隣に腰掛けた。ホームレスにしてはどこか清潔感のある外見だ。白ブリーフ姿だが。 「あ、いいこと教えてやる、ここら辺はな、警察が少ないんだよ」  絶対に犯罪者かそれに近い人。なんだか怖くなってベンチから立ち上がった。 「Frühlings Erwachen」  おじさんの言った言葉が聞き取れなかった。頭の中には何も浮かばず英語か何かだと思った。 「ドイツ語で『春の目覚め』っていうんだ。フランク・ヴェーデキントの戯曲でもある。少年の悩みはわかるぞ。ずばり、性の悩みだ」  大股を開いて恥ずかしげもなく座っている。背もたれに手を置きなんだか偉そうだ。でも、ピンポイントで当てられたことに多少動揺していた。 「少年ぐらいの歳になるとーー」 『ミーンミンミンミンミンーー」 「うるせぇな!」  おじさんは蝉にキレていた。
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