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春の目覚め
変態おじさんが去ってから随分と経った。辺りが暗くなりそろそろ帰ろうと携帯で時間を確認すると着信が7件来ていた。全部小春からだ。『今どこ』というメッセージを返そうとすると小春が向こうから走ってきて、「心配したぞばか!」と怒っていた。しかし、すぐに顔色を変えて、
「なんかあった?」
と聞いてくる。
打ち明けるならこのタイミングだと思った。
もしかしたら、理解してくれるかもしれないという期待はあった。ずっと一緒にいた小春なら、と。
しかし、懸念もあった。ずっと一緒にいたからこそ、余計ショックが大きくなるのではないのか。断られたらそれこそ関係を断ち切らなければならない。小春を失うことは想像できない。たぶん、今もこれからも耐えられない。
だが、受け入れられたときの恩恵は計り知れない。
でも、小春は「変態は嫌い」と言っていた。最近のことなので躊躇ってしまう。
けれども、僕は欲求を満たしたくて仕方がない。自分の膝窩を触ってもダメだった。手を痺れさせて触ると他人に触られていると感じるなどというのはホラ話だった。
それでも、と頭の中でぐるぐるしていて結局、
「なにもないよ」
と答えてしまう。
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