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Tシャツ短パン
蒸し暑さの中、街頭に照らされたカラフルな浴衣が目の前を通り過ぎていく。露出部分が少なく、見ているだけで暑苦しかった。
涼しい格好でも汗が額を滑り落ちる。夜中のことを必死に振り払い、小春を待っていた。
「おまたせ」
雑踏の中、流れに紛れていつの間にか近くまで寄っていた。小春の顔がほんのり赤かった。それに肩に力が入っているようにも感じる。
「暑いのか?」
「なんで?」
「顔が赤いような気がして」
彼女は視線を下に落とした。足元に何かあるのかと確認したが何もない。
「服……」
「服?」
Tシャツ短パン姿というラフな格好だ。しかし、いつものぶかぶかではなかった。胸が強調されていて、あぁと察した。
「う、うっさい!」
何も言ってないのに、ばんっと肩を叩かれる。今更なんだというのだ。昔は一緒にお風呂にも入っていた仲なのに。
「もう、行くから」
僕を置いて行って先に行ってしまう。身体のラインが確かに強調されている。短パンも膝までのものだ。その後ろ姿に不思議な高揚感を抱く。
「早く~」
人ごみの中、かき分けるような声が聞こえる。すでに姿は見えない。
「おい!」
小春の後を追いかけた。
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