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小春の胸はあきらかに膨らんだ。小さいころから知っている故、大きさの変化を家族と同等かそれ以上に認識している。いつもおさがりのぶかぶかな服を着ているから強調された今日は余計感じた。
どこからか「うわ、あの子胸すっげ」という声が聞こえた。
中学校に上がってから下ネタ的な話は増えた。誰がかわいいとか誰が好きとか、誰の胸がでかいとか。男子は男子だけの輪が出来上がっていって、女子と話しづらくなっていった。そしてお前はどうだと聞かれて困った。
どうもこうもないのだ。
別に胸は身体の一部で女性が突出しているだけだ。男性にもあるし。そこの魅力は僕にはわからなかった。
なのにみんなそれが当たり前とばかりに話しかけてくる。鬱陶しいし腹が立つ。お前の感覚で話してくんじゃねぇと、言ってやりたかった。
「あぁ……」
小春は膝を抱えるようにしてしゃがみ、金魚すくいをしていた。一回100円。くいは破れ一匹も取れなかったようだ。店のおじさんは応援するふりをして胸をガン見していた。
「行くぞ」
手を引きその場を離れた。
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