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「わりぃわりぃ、ついつい。危ないと思ってよ」
そう言いながらなお手を放そうとしない。小春は硬直し、まるで信じられないものを見ているかのように目が見開かれていた。
「なら離してもらえませんか?」
「あぁ、離すよ。もちろんだ」
一向に離さなかった。それどころか指先をうならし揉んでいた。
「警察呼びますよ」
ボケットから携帯を取り出した。男は「ほら、離した。これで文句はないよな、ガキ」と言い残し去っていった。
地面にへたり込んだ小春は茫然としていた。感情のない人形のように、じっと夜空を見つめていた。
「大丈夫か?」
彼女の肩に触れようとすると振り払われた「あ……」と涙がこぼれ始め、泣きだした。
「どうしたんですか?」
はっぴを着た男が駆け寄ってきた。しかし「大丈夫です」と短く答え、首に腕をまわして歩き出した。
「ごめん……」
久しぶりに泣いたところを見た。自分の不甲斐なさを嘆いた。
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