50人が本棚に入れています
本棚に追加
三話「守護者選定」後編✳
「気持ち悪いです」落ち着いた声で言えるのは、タリーが私の側で片手を握っていてくれるから。
彼が何かする訳じゃないし、腕っぷしが強い訳でも、決して威圧できる風貌でもない。多分私の気持ちの問題なんだろう。
ん? 何十人目かで今までにない感覚があった。優しい手、気持ち悪くはない。少し待っていると、そっと手首や肘に触れる。
うん大丈夫。首元に手を寄せられ、鎖骨に触れても気持ち悪くはない。
「気持ちいいです」でも、ここまでね。
「守護者と認めます。奥の間へどうぞ。選定は続けます」
昨日の選定で私が発情したことで、候補者申請がどっと増えたらしい。
今日は伴侶でも選定しない限りは続ける、でないと終わらないと言われた。
何十人と断り続けるとまた、嫌じゃない人がいた。
大きな滑らかな手のあっさりした触れ方で、一応、とか声が聞こえそう。きゅっと握手をしてみると、いい感じ。
「気持ちいいです」こういう関係もいいかな。
「守護者のお一人です。別室へお移りください」言葉にならないどよめきを感じる。身分の高い人なのかも。
「選定を続けます」神官長が告げた。
その後二人、肘くらいまで触れた時点で決めた人がいて、今日の儀式は終わりとなった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「守護者に会いに行きましょうか」目隠しを解き、タリーに上着を着せかけて貰うと、神官長が優しく声をかけてくれた。
「今日はスムーズに進んでよかった」ふう、とため息を吐いた神官長は、昨日の心労が大きかったようだ。
私は嫌がる、酷い奴はいる、その上発情して伴侶を決めてしまった。今日が普通なんだよね、申し訳なかったわ。
「早々に伴侶が決まって心配しましたが、却って良かったかもしれませんね」巫女様も安心した様子だった。
別室で待ってくれていた守護者達に挨拶する。
彼らの綺羅綺羅しいことと言ったら。乙女ゲームの面目躍如という感じ。私に色気がないのは、こちらでカバーして貰えそう。この光景だけを見たら、BLバージョンを疑ったかも。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……ぁ、ん」これヤバいわ、気持ち良すぎ。
選定三日目、タリーの他では初めて、乳首まで許してしまった。
「……気持ち、いいです」そっと下腹部に動く指の気配に、また発情しそうで止めた。
「守護者、伴侶候補と認定します。別室へお移りください」神官長の声に安堵が伺える。すみません、初っぱなから。
「守護者は後一人選定可能です。続けましょう」宣告に緊張が戻った。
何十人、終わったんだろう。ずっと気持ち悪いのが続き、後一人だと言われたからか「気持ち悪い」と言ってもすぐに手を離さず、タリーに止められた人が数人いた。
そして彼。そっと触られたのに、ビクッとするくらい衝撃的だった。気持ちいいの? 悪いの? と悩む内に、指先が乳首を掠めた。
「気持ちいいです!」何だかこれ以上はまずい気がする。
「守護者と認めます。別室へどうぞ」はぁ、と沢山のため息が聞こえた。
「七人の守護者が全て選定されました。これで選定の儀を終了し、残った候補者の申請は取り下げとなります。皆さん、お帰りください」
静かになった部屋で目隠しを外された私は、昨日の様にガウンを着せて貰うのを待った。
落ち着いて見ると、真っ白で何もない部屋ね。窓もなくて、一面の壁が大きな鏡になっている。
大きな寝台が追加され、寝具が整えられていく。まだ何かあるのかしら?
「続けて、伴侶や守護者達との契りの儀を行って下さい」神官長と巫女様が礼をして退出して、タリーと二人きりになった。
多分真っ青になった私を抱きしめて、タリーが囁く。
「気持ち良くしてあげるよ。大丈夫、この離宮にはもう、守護者達しかいない。それに今は最後まではしないから」
うそ、まだ何かあるの?
「っ……ん!」パニックになって叫びかけた私の唇を、タリーが塞ぐ。流石に良く分かってるわ。
口付けを受けながら、シーツの中でタリーの手が蠢く。優しく胸を揉み、時々そっと乳首に触れる。
「気持ちいい?」耳元でタリーが囁いて、背中をすっと撫で上げる。
「……ん、気持ちいい」頷くと、タリーにゆっくりと薄衣を剥ぎ取られた。
「ヴェロニカ、綺麗だよ」私に笑いかけながら上衣を脱ぎ捨てるタリーは細身だけど、やっぱり筋肉の付き方が男性らしい。
花の香りの中で覆い被さってくるタリーのしなやかな体を、私の心と体が歓喜して迎えた。
最初のコメントを投稿しよう!