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アイデアの種、という物を友人から貰った。何とこの種を植えると、アイデアが生えてくるらしい。
売れない小説家である私に取っては救世主のような種だ。
早速植えて水をやってみると、暫くもしない内に芽が出て実がなった。
どうやら、この実がアイデアであるらしい。だが、見た目何ら変哲のない実であったため、取り敢えず私は口に含んでみた。
少し酸っぱく、続いて気持ち良い甘さが口の中に広がった。
暫く味を楽しんでいると、驚く事に頭の中にアイデアが湧いてきた。
それは傑作としか言い様のない代物で、一刻も早くコレを文章にしようとペンを取った。
数日後、私は友人の元を訪ねた。
「やぁ、どうだった。アイデアの種」
「あぁ、実に素晴らしい物だった。ところで、君に頼みがあるのだ」
なんだね? と聞いてくる友人の耳に口を寄せ、私は呟いた。
「文才の種というのは、持ってないのかね?」
やはり私は、売れない小説家であった。
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