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第二話
話ができるかはわかりませんが。
構いません、少しだけ。
何だろう、また男の声がする。
ここはどこだ?カーテンの中?
「恐れ入ります、警察の者です」
警察?
シャーと音を立て開いたカーテン。
スーツ姿の男性と制服姿の人がいる。
「本日は、お話もままならないと思いますのまた後日伺います、ただし、病室の外は危険ですので、出歩かないように、部屋に鍵をかけさせていただきます、宜しいですね」
ぼーっとしている耳から聞こえた言葉にうなずくしかなかった。
またメガネをかけた男性。
「野島さん、これ、何かわかりますか?」
胸から出したものは。
「ボールペンですか?」
「そうです、ではこれはわかります?」
四角いものは。
「リモコンですか?」
「そうです、ではあそこにいる方はお分かりですか?」
奥の方を指さした。
怪我をした男性が見えるけど。
よくわからない、首を振った。
「ゆき!」
「今はまだ、もうちょっと待とう」
誰?二人の男性が見えた。
ゆきと呼んだ人は見たことがあるような気がした。
女性がこういう。
「野島さん、ここは個室なので、何かあったらこれを押してくださいね」
個室?
うん。
ボタンを握らされた。
皆が出ていく。
女性が周りで何かをしている。
「あの・・・」
「なんですか?」
「ここは?」
「ここは病院ですよ」
病院?
「すごく眠い」
「寝てください、安心してお休みください」
その言葉に安心した、眠っていいんだ。
ふとなんとなくそう思って目を閉じた。
呼吸が何だか楽になったような気がした。
「あいつ死ねばいいのに」
「あまり大きな声で言うな、聞こえる」
「いいじゃんか、殺すわけじゃない、ただ堕ちる所まで落とせば後は勝手に世間がしてくれるさ」
「でもさ、案外しぶとくない?」
「あのくそマネージャさえいなければな」
「できてるって言っちゃえばいいのに」
「この世界、そんなので乗って来るかバーカ」
「いいじゃん、ゆっきーだけいなくなればあのバンドはバラバラだ」
「くそっ、たかだか曲が売れたからって」
「あれは俺の曲だ、俺の物だ!」
「はい、はい、出て行ってからじゃ文句を言っても遅いよね」
「ウッせー!」
「あいつ殺しちゃう?」
「ぜってー殺す!」
目の前にある大きな扉の向こう側から聞こえた声に俺はそこから逃げるように走り出した。
ああそうか、それで走りだしたのか。
でもまただ、走っても、走っても、暗闇の中を、まるでランニングマシーンに乗っているみたいに同じ所で走っているような気がする。
でもまた風景が変わった。
あれ?またさっきの工場?
でもなんか違う。
耳を澄ませると音がする。
シュー、シュー。と何かが漏れるような音。
靄、きり?目の前が白い物で霞んでいるような、そしてまた体が動かない。
只今度はわかる、俺は寝ている、それも地面に。いや床だ、それも白い部屋の中?
「ヤバいな、あいつ、警察沙汰になる前にずらかろうぜ」
「あそこまで嫉妬するか?あの曲は、あいつのもんじゃねえだろ?」
「被害妄想?」
「捨てられたんだもんな」
「それわかってないんじゃねえの?」
笑う男二人。
それを下から見上げていた、声はなんだか知っているような気がした。
「お、起きたぜ、王子様」
「ヤバいな、目をふさごうぜ」
ビーッ、ビリッ。
ガムテープだろう、目がふさがった。
「何してんだよ!」
誰だ?
「なんでもねえよ、俺そろそろ帰りたいんだけど」
「俺も、暇でねーしよー」
ジャリ、足音、もうひとり来た。
「もう少し待ってくれ、代わりのもんが来る」
ん?この声は?
「起きたのか?」
「ああ、まずいと思って目をふさいだ」
「そうか、これでも聞いて狂ってろ」
耳にものすごい音量が入ってきた、耳がいたくて悶絶した。
そして俺は気を失った。
たぶん・・・
あれ?また景色が変わった。
今度はどこかの部屋の中だ。
レースのカーテンが風に揺れている。
目線を落とすと、俺はソファーに座って、タブレットを見ている。俺が俺を見ている?
顔をあげると、広いワンルーム、先には男性がいるのがわかる。
「はい、どうぞ」
目線をうつすと、目の前に出てきたカップを受け取った。
「どう?できそう?」
この声、聞いたことがある。
カップの先には黒いシャツに白いパンツ姿の男性が座った、なんだか、優しい気持ちになったのは何でだろう?
俺は何かを彼に渡した。
「いいね、この調子でどんどん書こうか?」
男性は俺の頭をなでてくれた。
そのまま俺は彼の胸に入って行く、なんだか安心する匂いがする。
次に大きく息を吸い込むと、その安心した匂いが消えた。
ガバッと抱きついた物から手を離した。
また真っ白な世界。
たださっきまでとは違い、黒い線がある。
線だよな?
そう思ったら急に視界が高くなった。
何かにつまみあげられたような、自力で立ち上がったんじゃなくて、違うもので引っ張られたような感覚。
黒い線はマンガの枠、コマだ。
すると俺は何か黒い液体の中に入れられようとしている。
「いやだー、やめろ!」
ぼちゃん!
「ぷはー!」
ベちゃん!
「押し付けるなー、むぎゅ!」
紙にスタンプでもおすように俺が押し付けられた。
持ちあがると、紙には今言った言葉までも付いている。
「ウワー、助けてー!」
ぼちゃん‼べたん!
苦しい。
紙がめくりあがり、俺の姿がそこに押し付けられていく。
「もうやめてー誰か助けて!」
「助けて!」
自分の声で目が覚めた。
目が覚めた、夢だ。
右には大きな窓、そこからは青い空が見えていた。
のどが渇いた。
ボタンを押した。
ぼーっと外を眺めていた。
誰かが来たのがわかって、口に、何かが入ったのがわかった、それだけだ。
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