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第四話
物凄い光に手で遮った。
あれ?手が動く、って言うか、なんだこれ?
キラキラ光るシャツ、手には指輪とバングル?
その先に握っているのはマイクだ。
「♪これから見る夢は、理想か現実か?いつだって人は夢遊病者の様にさ迷い歩いて・・・」
あれ?俺歌ってる?
右を見た。ベースを鳴らしている人、あれ?この人病院で見たよな?
左を見るとギターをかき鳴らしている人、彼もいた、足をけがしていたみたいだったけど。
そして後ろには、恭平?
あれ?
ドラムをかき慣らしているのは恭平だ。
俺と目が合うとにっこりと笑った。
左右の二人が前へ出る。
「♪この先に何が待ち受けても、俺は君を離さない!」
キャーともギャーともいう人の歓声に包まれる。
手を振り、頭を下げる二人。
恭平ともう一人が俺の手をとると、五人で手を取り走り出した。
突き出たステージの端で、大きく手をあげ、歓声に答えた。
ハア、ハア、ハア。
また走っている、後ろを振り返ると追いかけてくる人たち。
隣には車が多く走っている。
その一台が止まってドアを開けた。
「早く乗って!」
恭平?
でもなんか違うような気がした。
そう、匂いが違う?
「なんだよ!何が起きてるんだよ!」
すると急に目の前が真っ暗になったんだ。
ガサガサという者凄い音の先で、窒息死させるなよ、という声が聞こえていた。
恭平が俺を殺そうとしていた?
いや違う、似ているけど、違う!
「登れ、階段だ」
そう言われ階段を上る。
ドンと背中を叩かれた、前につんのめるとどさっと体が倒れた。
その時何かに触れた。
ん、というようなかすかな声。
これは、恭平?じゃあさっきの声は?
「いくぞ」
「へいへい」
「さてと稼ぎますかー」
しんとしたような気がした。
でも動くとガサガサして音が聞き取れない。
ん、また誰かの声がした。
「お前ら何もんだ?」
ヨッちゃんの声?
「何もんてなー」
「人間だよな、ハハハ」
どす!
何の音だ?ううって、ヨッちゃんなんかされた?
それからは静かで、何が起きているのかわかんなくて。
ガラガラとなんか音がした。
「こいつらか?」
「へい」
すると俺の体が起こされた。
べりっと破け、そこから見えたのは知らない男たち。紙袋?
「へー、芸能人って綺麗なんだな」
「こりゃ高く売れるわ」
うる?
「まずは、これだね」
注射器?
「はい、おねんねしましょうね」
「さわるな!」
「うるせーよ、こいつらがどうなってもいいんだな」
そこに見えたのは…!
「ヨッちゃん!森!恭平!」
「どうなってもいいのかなー?」
足でけり上げているし手を汚い靴で踏んでいる。
「やめろー!」
「だったらいいよね」
「注射は嫌だ!」
「いやだって、気持ちいいのにー」
注射器が迫ってくる。
「やめろー!」
「由紀夫、由紀夫、目を覚ませ!」
目の前には恭平がいた。
「恭平、恭平―」
「大丈夫だ、大丈夫だから」
その後ろには。
「よっちゃ~ん、森ちゃ~ん」
「やっと思い出したか」
「よかった~、お帰り、ありがとうな」
俺は三人を抱きしめた。
警察が来た、俺たち四人はすべてを話した。
「では弟さん」
「確かです」
「たぶんそうです」
「それを指示したのが、前のマネージャーの葛西さんですね」
はい。
そこにはいってきたのは新しい会社のマネージャー宇都宮さん。女性は俺たちを見るとポロポロと涙を流した。
俺の夢は、いろんなのがくすりに寄って見せた幻覚、それでもどこかで覚えている所があった。
拉致監禁された。単なる仕事をずる休みし穴をあけただけではなく、ちゃんと管理された会社ではすぐに俺たちを助けてくれたのだ。
前の会社を辞めた。プロとなった俺たちは、恭平の弟、順平とケンカ別れ、あいつは違うグループを作りだした。
俺たちの曲に難癖をつけ、俺が作った歌だと言いがかり、結局グループもまとまる訳もなく、順平たちは崩壊寸前だった。
売れ始めた俺たちへの嫉妬がどんどん溜まって行ったのだ。
俺たちは大けがを負ったものの四人とも無事に退院。
そして職場復帰、多くのファンの前で歌うことが出来た。
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